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開発者が語ったスプラトゥーン レイダース

没になったタワーディフェンス案、アートの大転換、そしてシャケが塩を求める公式の理由。

執筆:SplatAtlas 編集チーム · 最終更新: 2026-08-03

任天堂は発売2日前の2026年7月21日、「開発者に訊きました」第22回として全3章のインタビューを公開しました。この作品がなぜこの形なのかを開発陣自身が説明している唯一の場所であり、しかも内容のいくつかは装飾ではなく実用です。塩の設定は難易度カーブの説明になっていますし、没になった試作の話はガジェットの手触りの理由そのものです。

以下、インタビューが確定させた内容を「結局それが何を意味するか」で整理します。事実はすべて公式インタビューと同時公開された公式画像に基づき、当サイトの解釈は最後に分けて示します。

誰がつくったのか

登場するのは4人。過去の担当がそのまま本作の形を説明しています。ディレクターがサーモンランの担当者であり、レイダースは実質「ひとり用に組み直したサーモンラン」だからです。

氏名担当これまで
井上 精太プロデューサーWii U『スプラトゥーン』の立ち上げからシリーズに関与。本作では開発全体を俯瞰し、スピンオフの方向性を設定。
伊藤 良彦ディレクター主にサーモンラン担当。『2』でプランナー、『3』でリードプランナー。本作ではゲーム全体の構成と遊びを統括。
園山 晃司アートディレクター『スプラトゥーン3』のUIリーダー。本作ではアート全体を統括。
田村 秀サウンドディレクター『3』でサウンドデザインリード(対戦SE・音のバランス)。本作ではBGMを含む全体方針を担当。

なぜ『4』ではなくスピンオフなのか

井上さんの答えは、11年3作を走り抜けたうえで「これまでと少し異なるアプローチで、ひとりでじっくりアクションを堪能できるもの」があってもいい、というものです。サーモンランやヒーローモードといった対戦以外の遊びを、サブ要素ではなく独立した入口として出したかったと語られています。

そのうえで「これからも対戦の遊びづくりは続けていく」と明言されており、だからこそナンバリングではなくスピンオフだとされています。『スプラトゥーン4』的なものを期待して来た人への公式回答はここにあります。本作は代替ではなく、意図的な別の枝です。

没になった最初の試作

最初のレイダースはアクションゲームではありませんでした。伊藤さんは、サーモンランを起点に「ひとりで捌けないか」を検証し、最初の答えが「仕掛けをフィールドに配置して、それと一緒に戦う」だったと語っています。つまりタワーディフェンスです。

没になった理由は「スプラトゥーンらしくない」から。要塞を組み上げると遊びが“見守る”方向に寄ってしまい、短時間に塗る・イカになる・飛び移るを詰め込むというシリーズの長所が活きない。井上さんはこれを、どんな遊びであっても「キャラやインクとの一体感のある濃密なアクション」が要る、というシリーズの原則として説明しています。

Early Splatoon Raiders prototype development screen published by Nintendo
任天堂が公開した初期試作版の開発中画面。画像 © Nintendo.

転換点は、防御を組み上げるのをやめてプレイヤーのアクション自体を拡張する方向に舵を切ったこと。そこから出てきたのがガジェットです。ガジェットが軒並み「動く」か「当てる」もので、置いて放置するものではないのは、この経緯そのものが理由です。

ガジェット

「究極のワンオペ」が意味するもの

設計目標には名前がついています。「究極のワンオペ」です。井上さんは目指した感覚を、スポーツや忙しいアルバイトで「考えるより先に体が動いている」あの状態だと表現しています。

それを機構に落とすと、ブキ1つ+ガジェット2つという構成になります。伊藤さんの説明は明快で、ガジェットは一度使うと一定時間使えなくなるため、1つのブキと2つのガジェットを代わるがわる使うことで無駄な時間を減らし、効率よく大量のシャケを捌ける。ゲーム全体がこのループに合わせて調整されています。

  • 忙しさは副作用ではなく狙い。少しずつ忙しさが増える設計にして、コツを学びながら進めるようにしたと明言されています。
  • クールタイムは持ち替えを強制するためのもの。1つのガジェット待ちで止まっているなら、その構成は機能していません。
  • どの難易度でも「気持ちの良い忙しさ」と「成長の手応え」が味わえるようバランスを取った、とされています。難易度を下げても遊びの核は削れません。

島は一度つくり直されている

当初のアート方向は明るく爽やかなリゾートでした。浮き輪で遊ぶシャケ、青い海、白い砂。園山さんも「良い感じにできた」と思い、実装したら楽しそうだと考えていたと語っています。それが没になった理由は、見た目の問題ではありません。

Abandoned bright resort concept art for the Spirhalite Islands
没になった当初のリゾート案のコンセプトアート。画像 © Nintendo.

プレイヤーが「いじめている側」に見えてしまったからです。試作を遊んだ人が、示し合わせたわけでもないのに口々に「シャケがかわいそう」と言った。島で楽しく暮らしている生き物を襲って宝を奪い、その戦利品で得をする構図に見えてしまう。田村さんは、冒険的で親しみやすいBGMがそれを助長し、進める動機が曖昧になったと補足しています。

そこで「やべぇ所に来ちまった」という新しいキーコンセプトで方向を組み直します。伊藤さんはその機能を率直に説明しています。この手の遊びでは負ける回数が増えるので、敵や場所が「やべぇ」と思えなければ負けに納得がいかない。島を不穏にすることが、敗北を筋の通ったものにするという理屈です。地形とシャケのラインナップはすでに変更できない段階だったため、ライティング・オブジェ・ディテールの側を作り直し、既存のものを壊し、錆びさせる方向で対応しています。

Final outlandish-environment concept art for the Spirhalite Islands
差し替え後の方向性。同じ島を「やべぇ所」として組み直した。画像 © Nintendo.

なぜシャケは強くなるのか:塩の設定

これは公式説明のあるれっきとした設定です。井上さんいわく、ウズシオ諸島にある「塩」は不思議な効果を及ぼしてシャケを狂暴化させる。シリーズを通してシャケは「おいしく食べられたい」という思想を持っており、シャケをおいしくする調味料といえば塩なので、彼ら自身がものすごい勢いで塩を求めてくる、という筋です。

伊藤さんが続けます。その塩に引き寄せられて集まったシャケたちは、ゲームが進むほど塩をまとって強くなっていく。園山さんは「最終的には塩釜焼きみたいな見た目になる」と付け加えています。

  • 敵が強くなっていくのは単なるレベルカーブではなく設定上の必然。文字どおり“漬かって”いっています。
  • 園山さんは、寒い地域では凍り、暑い地域では茹だると説明しています。プレイヤー側の状態異常(凍結・加熱)と同じ理屈が世界そのものに敷かれています。
  • シャケ視点ではウズシオ諸島は理想郷。自分をおいしくするのに最適な場所とされています。
  • 井上さんはタイトルにも紐づけています。「レイダース」は、シャケに占拠された、明らかに歓迎されていない場所に踏み込むという意味だと語られています。

状態異常

シャケの名前はどこから来たのか

伊藤さんによれば、名前はシャケ自身が名乗ったものではなく、イカ・タコ側の呼び方です。井上さんはその論理を、サーモンランがアルバイトであることに求めています。バイト仲間に最も効率よく伝えるための略語であり、刑事ドラマで犯人につけるあだ名のようなもの。わかりやすく、間違いようがなく、インパクトがある言葉が選ばれています。

ここに、複数の版を読み比べないと見えない点があります。任天堂はこのインタビューを日本語・英語・繁体字中国語で公開しており、名前のジョークは必ずしも翻訳を越えて残っていません。ローカライズ後の名前がその言語で成立する洒落を背負う必要があるためです。いちばんわかりやすいのがハネツキで、日本語版と中国語版は「羽根がついているから」と説明しますが、英語版の名前 Salivator はよだれの話になっています。

日本語英語中国語各版の説明
タンシオSalty Tongue延舌魚JP: 舌を出しているから(塩タン)EN: It sticks its tongue outZH: 因為伸出舌頭
ハネツキSalivator薄翅魚JP: 羽根がついているからEN: It's constantly droolingZH: 因為有翅膀
モグラMaws鼴鼠魚JP: 実際は魚だけど潜ってくるからEN: It shows up and tries to swallow you wholeZH: 因為會鑽進來

同一インタビューの日本語版・英語版・繁体字中国語版を突き合わせて作成。この食い違いは意図的なローカライズであり、どれか一つが誤っているわけではありません。しかもシャケ名に限りません。同じインタビューの中で、すりみ連合の背景を担うアイテムを日本語版は「アドベンチャーファイル」、中国語版も「冒險檔案」と呼びますが、英語版だけは Briny Scrolls です。傾向は一貫していて、英語版は洒落を作り直し、中国語版は日本語版に付き従います。

素材・アイテム

シャケの新バンド

サーモンランでは「ω-3(オメガ3)」というシャケバンドが演奏していました。田村さんによれば、本作ではその遠い親戚のような新しいシャケバンドが、シャケたちの士気を上げる音楽を演奏しています。同時公開された公式画像にその名前が出ています。DHA、ω-3から続く魚油ネタです。

つくり方は、ウズシオ諸島のシャケが慣れ親しんだ音楽を現地収録したイメージ。テクノ、ダブ、ミニマルといった没入感のあるジャンルを参照しつつ、それをシャケが島の漂着物で再現したらどうなるかを想像して組み立てられています。サーモンランで印象的だったチェロとティンパニは「シャケを興奮させる音」として引き継ぎ、そこに民族楽器を幅広く重ねる。狙いは、シャケにとっては心地良く、イカ・タコが聴くと「なんかやばい」と感じる音楽です。

Salmonid band art: omega-3 from Splatoon 3 and DHA from Splatoon Raiders
『スプラトゥーン3』のω-3(左)と『スプラトゥーン レイダース』のDHA(右)。画像 © Nintendo.

主人公と、シリーズ初の難易度設定

主人公はクラフト要素から逆算して生まれています。井上さんの説明では、本作はガジェットをつくって進める以上、頭と手を使う役が要る。しかしすりみ連合はそういう集団ではない(笑)。そこで、過酷な環境でも何でもつくれる、寡黙な職人肌のキャラクターが立てられました。伊藤さんは、この主人公がアジト船そのものも、その中のミニゲームまでつくったと述べています。

井上さんは、難易度設定を入れたのは「スプラトゥーン」で今回が初めてだと明言しています。トラベラー/レイダー/サバイバーの3種。新規や久しぶりの人でも入れるようにしつつ、どれを選んでも本作の核は味わえるように調整されています。

  • たすけ機能では、参加者それぞれのレベルに応じて自分の強さも敵の強さも変化します。始めたばかりの人とやり込んでいる人が組んでも、片方だけが働く形になりません。
  • すりみ連合が主役なのは「まだ描き切れていない魅力がある」という判断から。その背景は「アドベンチャーファイル」が担っています。
  • すりみ連合の服装は『スプラトゥーン3』のフェス「無人島に持っていくなら? ギア vs メシ vs アソビ」が下敷き。フウカは釣り竿(ギア)、マンタローは携帯ゲーム機のようなもの(アソビ)、ウツホは常に腹を空かせています(メシ)。
  • アジト船のミニゲームのドット絵はゼネラルプロデューサーの野上恒さんが担当。ミニゲーム自体は入社年次の若いスタッフが中心となって開発されています。
  • 無限に潜れるダンジョンの存在も明言されています。装備をほぼ限界まで強化して臨む必要がある、とされています。
Character design sheets for Deep Cut and the Mechanic
すりみ連合と主人公のキャラクターデザイン画。画像 © Nintendo.

すりみ連合の衣装はフェス由来

今作のすりみ連合の新スタイルは、ゼロからの新規デザインではありません。園山氏によると『スプラトゥーン3』で実際に開催されたフェス「無人島に持っていくなら? 道具 vs 食料 vs ヒマつぶし」を汲んだもの。道具派だったフウカは釣り竿を持ち、ヒマつぶし派のマンタローはちっちゃいゲーム機のようなものを携え、食料派のウツホはゲーム中ずっとお腹を空かせています。

衣替えには作中の理由もあります。物語開始時点で、漂着からおよそ1か月。井上氏いわく、それでもオシャレへのこだわりは失われていません。彼らはあくまでバンカラ街の若者です。伊藤氏によれば、収集アイテム「アドベンチャーファイル」にはすりみ連合の背景につながる情報が散りばめられており、衣装だけが設定の担い手ではありません。

「もっとも多才な主人公」のデザイン

第3章の題は「多才な主人公」。メカニックの見た目も、本作のほかの要素と同じ問いから設計されています。無人島で1か月暮らすと、実際どうなるか。伸びっぱなしの眉毛は意図的なもので、園山氏が「無人島にいるから、ワイルドに眉毛も伸ばしっぱなし」と、都市が舞台の本編ではあり得ない要素だからこそスピンオフでと、デザイナーを粘り強く説得して実現しました。背景には井上氏のルール「デザイナーがその場に立って絵をイメージできるように」があり、バンカラ街からの距離・植生・環境を地図込みで具体化してから描いています。

Design studies for the Mechanic's island-grown hairstyles
無人島暮らしで伸びたメカニックの髪型スタディ。画像 © Nintendo.

メカニックのツナギ(作業着)も同じ論理で、しかも収集要素です。ツナギには多数のデザインが用意されており、気分や装備に合わせて着替えてほしいと開発陣は語っています。衣装集めが「想定された遊び」であることの公式確認です。

Design sheet of the Mechanic's collectible jumpsuit outfits
メカニックのツナギのデザイン各種。ゲーム内で収集できます。画像 © Nintendo.

アジト船のミニゲームは野上氏のドット絵

アジト船で遊べる2Dミニゲームは、設定上は「メカニックがオタカラ・ハントの合間の娯楽用につくったゲーム」。実際の開発は社歴の浅い若手中心のチームが担当し、ドット絵は本作ゼネラルプロデューサーで「どうぶつの森」「スプラトゥーン」シリーズのプロデューサーでもある野上恒氏が自ら描いています。

田村氏が明かした制作裏話も見事です。画面をブラウン管テレビの見た目に寄せるため、野上氏が若手スタッフにブラウン管の表示の仕組みを解説したとのこと。忙しいオタカラ・ハントの箸休めとしてのレトロ感が狙いです。

「ヘルプ」のレベル調整の仕組み

協力プレイの「ヘルプ」機能の仕様も明言されています。園山氏:敵が強くて行き詰まったら、オンラインの誰かに助けを求めて一緒に攻略できる。伊藤氏がその調整を説明しています。進み具合が違うプレイヤー同士でも「それぞれのプレイヤーキャラクターのレベルに合わせてプレイヤーや敵の強さが調整される」。始めたばかりの人と熟練者が組んでも、どちらかに任せきりにならない設計です。

田村氏によれば、近くの人やフレンドと部屋をつくって一緒にストーリーを進めることも可能。離れたフレンドとは、Nintendo Switch 2 のゲームチャットで画面を共有しながら遊べます。オンライン機能には Nintendo Switch Online(有料)への加入が必要です。

ここから言える攻略上のこと

インタビューは設計資料であって攻略記事ではありませんが、そこから直接導けることがあります。この節は当サイトの解釈です。

  1. 常に持ち替える。ブキ→ガジェット→ガジェットの循環で無駄な時間を消すことが構成の前提です。1つのクールタイム待ちで止まる構成は、設計と喧嘩しています。
  2. ガジェットは「置く」ものではなく「動く・当てる」もの。設置型が没になった経緯があるので、評価軸は「次に何ができるようになるか」であって「あとに何が残るか」ではありません。
  3. 難易度を下げても遊びは削れない。3種すべてで成長と忙しさが成立するよう調整されたと明言されています。
  4. 敵の強化は設定上の必然で、しかも連続的。塩をまとって強くなり続ける以上、こちらの強化も常時進める前提の設計です。
  5. 寒い地域では凍り、暑い地域では茹だる。これは世界設定であると同時に、その地域がどの状態異常寄りかのヒントでもあります。

関連ガイド

参考資料

出典:任天堂「開発者に訊きました」第22回(2026年7月21日公開)の日本語版・英語版・繁体字中国語版、および同時公開された公式コンセプトアート・開発画面。発言は要約であり逐語引用ではありません(全文は下記リンクからどうぞ、一読の価値があります)。最終節の解釈は当サイトによるものです。